プロとアマチュア
学生時代、音楽と生活が等しくなるほどのめり込んでいたころに、漠然とプロに憧れたことがある。
自分が、あまたいるプロ志望のなかで、どのくらいのレベルなのかも知ろうともせず、まずは音大に入ればいいのか、または留学すればいいのかと、インターネットもない時代、本を読んだり、レッスンに通ったりして、情報収集をしただけで、一歩近づいた気持ちになっていたあのころ。
自分なんかより遥かに上手くて、たくさんの音楽を聴き、たくさんのライブをこなしていた同期に
「プロってなんだと思う?」
と、何を期待するでもなく、でも周りにいた誰よりも音楽と近い関係にある彼の言うことなら、きっと本質に近い答えが返ってくるんじゃないか、くらいの思いを潜めて訊ねてみたら、
「お金が稼げる人」
というシンプルな答えが返ってきた。
「え? お金?」
「そうお金」
どんなにテクニックがあろうが、どんなにテクニックがなかろうが、お金が稼げる人がプロで、それ以外はみんなアマチュアだと。
もやもやと言葉にならない気持ちが残ったけれど、それに反論できるだけの答えも持っていなく。
ぶっちゃけ、プロより上手いアマチュアはいる。
では、アマチュアとプロとは何が違うのかと訊ねられたら、それで生活が成り立つほど金銭を得ているかどうか、という以外に明解な答えにはまだ出会ってはいない。
あれから20年以上も経っているというのに。
卒業して十数年後、トラ(エキストラ)で知り合いのバンドの本番に乗ったときに、何回かギャラをもらったことがあるけれど、お給料でもらうお金とは価値が違いすぎて、何年も経っているのに、茶封筒のなかで眠ったまま使えないでいる。
毎月給料が入るいまの仕事の方が明らかにプロと言えるもののはずなのに、いまだに自分はこの仕事のプロですと胸を張って言えないのは、プロに対しての理想が高すぎるからなのだろうか。
そんなことをつらつらと思った成人の日。
新成人のみなさん、成人おめでとうございます。